僕は20歳だった。それが人生で最も美しい時だなんて誰にも言わせない。
何もかもが若者を破壊しようとしている。恋、思想、家族を失うこと、大人たちの中に入ること。この世界の中で自分の場所を知るのはキツいものだ。
むかーしむかし、フランスのポール・ニザンという小説家は、『アデン・アラビア』という小説の中でこう語った。
それからたくさんの時間が流れて僕が生まれ、またそこから二十年の時間が流れて僕はハタチになり、そこからまた二年と少しが経って、僕は今こうやって文章を書いている。
明日から社会人になるらしい。それがこの文章を書き始めた理由だ。早い話が泣き言で、もっと言えばエピローグ、もっと言えば遺書だ。
永遠に続いてほしい時間がたくさんあった。もちろん、早く終わってほしい時間もたくさんあった。そうしてそれらの時間について、色々と思い出してみると、永遠に続いてほしい時間というものは、いつの間にか僕の中で永遠になっていた。
記憶というものは良くも悪くも曖昧で、色んな人に踏みつけられ、傷つけられた。しかし中には丁寧に扱って、磨いてくれる人もいて、どれだけ尖っていた記憶でも、最後には丸く光り輝くものが残った。
輪郭がぼやけ、忘れるべきは忘れ、そうして最後に残ったのは、僕の永遠に続く学生時代の記憶だ。
福岡の夜を越えて、池袋で朝を迎え、柳川で、練馬で日々を過ごし、気が向いたら海を見に行って、横に女の子がいたときもあったし、男がいたときもあって、最後の最後までひとりぼっちだった日もあった。
永遠であれ、と思った。早く終わってくれ、と願った。そうして僕の永遠に続く学生時代は今日終わる。
「いつか後悔するぞ」と、何回言われたかわからない。
かかってこい。何回でも失敗してやる。
失敗は何度もする。学生生活を通して、何億回失敗したかわからない。それはこれからの人生にしたってそうだ。
迷惑をかけた。申し訳ない、で片付けられないこともたくさんあった。
反省していることは山ほど。
でも、後悔はしない。前に進む。
「失敗する」選択肢はあっても、「間違っている」選択肢なんて一つもない。
だから、反省はする。後悔はしない。
未来が僕を否定しても、俺は絶対に過去を否定しない。
そうありたいと思う。
いっつも言ってるけど、僕は「最後」というものに本当に弱くて、何にでも「最後」って言葉をつけただけで泣きそうになる。
だからこそ人一倍「最後」は大切にしたい。音もなく終わるものが苦手だ。それでも、人から「これが最後だからねえ」と言われるのは嫌だ。やっぱり泣きそうになってしまうからだ。
そうして、これは本当の本当に、僕が「学生」として書く最後の文章になる。
いろんなことを思い出して、いろんなことを忘れた。
こんなにたくさん、覚えておくべきこと、忘れたいことが多い学生生活を送れて、僕は本当に幸せだった。
これから、恋や思想や家族や、色々なものを失うかもしれない。
大人たちの中に入って、自分の場所を知って、悲しい気持ちになるのかもしれない。
それでも、僕は永遠に続く学生時代を生きていきたい。
だからこそ、二十歳を人生で最も美しい年だなんて言わせない。
これからも、永遠に続く人生で最も美しい時を過ごし続けるだろう。
俺もあんたらも、お互い幸せに生きていこうや。
そんじゃ、またねっ!絶対また会えるよっ!
2018年4月1日 池袋明治通りのスターバックスにて